おろち湯ったり館へ行き、久しぶりにプールにありついたのだった。ホームプール閉鎖前の1月下旬以来なので、実に約2ヶ月ぶりである。
別のブログにも書いたが、先週仕事の用件で鳥取市に行く機会があって、その日は16時くらいで解放されるスケジュールだったので、島根に帰る道すがら、倉吉市にあるという温水プールに立ち寄るという計画を立てていた。初めて行く街の、初めて行くプール。仕事の用件のことなんかそっちのけで、気持ちが盛り上がっていた。しかし実際に当日になり、まあまあ朝早くに出発して鳥取市まで車を走らせたら、なんかもうじっとりと疲れてしまい、帰りにまた同じ距離を走って帰るのに、その途中でプールなぞ……、となって実現しなかったのだった。僕が今生で倉吉市の市民プールに行く機会は、これが唯一のものであった可能性が高い。そう考えればちょっと無理してでも行くべきだったような気もするし、やっぱりあのときは、翌日は普通に出勤だったし、あきらめて正解だったとも思う。
そんな残念な出来事も経て、とうとう叶った2ヶ月ぶりの遊泳であった。その首尾はどうだったかといえば、もちろん気持ちよかったけれど、かき立てまくっていた思いを十全に満足させるほどの喜びは、正直言って得られなかった。
たぶんこれは、この2ヶ月間で僕のプール回路が閉じているのが原因だろうと思う。水泳って、水泳に限ったことではないが、間を空けて、ある瞬間に一気にやって大きな感動があるタイプの行為ではなく、習慣として定期的にやっていると、だんだん回路が太くなって、それが保たれている間はずっと心身の状態が底上げされるような、そういう行為なのではないかと思った。だから尊いのだとも。
そんなわけで、ますますホームプールの再開が待ち遠しくなったのだけど、ちょうどつい先日、ホームプールからハガキが届いたのである。それは、『2月から4月いっぱいまでプールは工事で閉鎖するから、その期間が会員期限に含まれる人は再開後に会員カードを持って来館してくださいね、延長しますからね』という内容で、思わず、「お、おん……」となった。2月から閉鎖していて、そしてやっぱり閉鎖期間が短くなるということは決してなさそうなプールから、3月下旬に届くその連絡。なんだかトボケている。トボケているというか、ちょっと会員の扱いがさすがに雑なのではないかと、声高に叫ぶわけではないが、少しもやっとしたものを抱いた。もっとも顧客満足度が高い、ユーザーにとって快適な空間作りに尽力しているような場って、そこに愛着を持つ人々が群がるせいで、逆に居心地が悪くなるので、このくらいぞんざいなほうが逆にいいかもしれないな、などとも思う。めんどくせえ顧客だな。
季節はすっかり春になった。子どもたちは春休みだが、プールは開かない。春休みの営業をすっぱりあきらめるってすごいな、さすがは公営だな、と思う。もっとも子どもたちなんか別にどうでもいいのだ。プールの真の情趣って、たまに行ってはしゃぐ、そういう接し方をしたって決して得られない。ストイックに、それがまるで日々の勤めであるかのように、中高年が黙々と歩いたり泳いだりする、そういうところにあるのだ。だから本音を言えば子どもなんかなるべく来てほしくない。このめんどくせえ顧客は、さらに老害でもあった。もはや救いようがない。早く自由に泳ぎたい。